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先週金曜日に、ここ最近で一番嬉しかった仕事がありました。
あのBR、バイエルン放送でのラジオ放送のための現代歌曲の録音です。
ドイツでもクラシックといえばBRというイメージのある放送局。
ここで録音する機会をいただけたことを本当に光栄に感じています。

BR Studio Dez2021

録音したのは作曲家Claus Kühnlさんの歌曲集 Vom Grunde des Brunnens (「井戸の底から」)。クラウスさんはフランクフルト音大の教授を務められるなど、重要な現代ドイツの作曲家のおひとりです。ピアニストはもう十年近い付き合いになる南アフリカ人の素晴らしいピアニスト、エステア・クルーガー。作曲家に直接アドバイスをもらい、最高の共演者に恵まれて、幸せな仕事でした。
BR Studio Flügel Dez2021

エステアは普段南アフリカの大学で教えているので録音の直前にドイツに飛んだのですが、たまたまオミクロン株のために空路が閉鎖になる一日前、南アフリカがレッドゾーンに指定される前の便を予約していたために、奇跡的に入国とその後の録音が可能になりました。ただ、バイエルン放送の防疫規定が非常に厳しく、なんと録音当日の作曲家の同席はNG。そして出演者は全員ワクチン接種済みかつPCR検査済みでなければならないということで、PCR検査の結果が出るまで本当に録音が行われるのかドキドキしていました。作曲家が当日不在だったのは残念ですが、録音がキャンセルにならなかった奇跡にただただ感謝です。

歌曲集「井戸の底から」は小さな幸せや安らぎの中で絶望を予感する、陰鬱さの中でほのかな希望を求めてあえぐといった曲ばかりで、まさにコロナ禍の冬にぴったりの内容。
今回の録音に当たって感じたのが、自分の大きな成長でした。特にこの2年間で自分のドイツ語力が大きく進歩したことを実感しました。ドイツ語の内容を日本語を介在するのではなく完全にドイツ語として理解しながら歌うことが出来るようになったのがつい最近。そしてドイツ語話者に伝わる発音のためになにが必要なのかという細かな機微が以前よりもずっとよくわかるようになりました。また詩の解釈においても、見えていなかった多くのものが見えるようになったと感じています。
そんなわけで初めてこの歌曲集を歌った3年前とはまったく違った演奏になりました。録音の仕上がりと放送が楽しみです。

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録音が行われたニュルンベルクのスタジオ
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