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久々の更新。

4月と5月にかけて、4つのコンサートに出演しました。

4月に出演したのはバイエルン地方にあるゼーオン修道院のモーツァルト記念演奏会シリーズの一環で企画された演奏会。
モーツァルトと旅、というテーマでオペラアリアを中心によく知られた曲から知られざる名曲まで、トークを交えたコンサートでした。

今は総合文化施設としての色合いが強いこの修道院、湖の中にある半島に建っています。モーツァルトも旅の途上この修道院に滞在し、数曲の宗教曲を残しています。

私はよく知られたオペラアリアに加えて、モーツァルトが11歳の時に作曲した宗教曲の2重唱やフランス語の歌曲など、いままで演奏したことがなかった曲を勉強し披露することが出来て幸せでした。
中でも印象深かったのがアンコールで歌ったモーツァルト版の猫の二重唱です。ミャウミャウ歌うのが楽しかった。

こちらがその重唱。大歌手ブリン・ターフェルの録音。日本でも視聴可能だといいのですが…。


素晴らしいソプラノ歌手のソーニャ・ロイトヴィラー、ピアニストのミカエル・ゲーリウスの共演させてもらえたことにも感謝です。

共演者たち
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演奏会場
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また、5月にはヘアブレヒティンゲン(Herbrechtingen)という町の音楽祭「歌の春」に出演し、計3つの演奏会で歌わせていただきました。
この町がまったくもって風光明媚な町でして…。奇岩の楽しめる散歩コースが演奏会場から徒歩でいける場所にあり、滞在期間中何度も歩きました。
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この音楽祭は若いソプラノ歌手、テレーザ・ロメスが主催しています。彼女の才気が存分に発揮され、プログラムにお客様を楽しませる工夫が溢れているのが素晴らしかったです。

テレーザとの写真
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今年の音楽祭のテーマは「花」。私はピアニストやギタリストと共にシューベルト、ウェーバー、シュポーアなどの歌曲を中心に演奏しました。また、作曲家クラウス・キューンル自身による伴奏で、彼の作曲した歌曲集を歌ったことも得難い体験になりました。

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何より興味深かったのが、音楽祭2日目のお散歩コンサート。
演奏会の前半は野外の会場にて出演者が出身地域の民謡をギターの伴奏やアカペラで演奏。そして休憩時に皆で200メートルほど離れたホールに移動して少し違った毛色の、キューンルの現代歌曲を聴かせるというプログラム。また前半には植物学者が曲の合間に歌われる花々に関するトリビアを披露するというおまけつき。観客の喜びを肌で感じるコンサートになりました。

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ギター伴奏で「からたちの花」や「ひらいたひらいた」などの日本の曲を歌いました。
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前半のラストを飾ったメンデルスゾーンのアカペラ4重唱
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ドイツではコロナ禍に終わりが見えてきたかなというところで、少し前までなんとなく明るい空気がありました。今はドイツでも話題はウクライナ情勢一色で、そんな楽天的な雰囲気は吹き飛んでしまったようです。

それはさておき。
12月の後半から2月末まで二か月半の間、ドレスデン室内合唱団の経営責任者(Geschäftsführer)を務めさせてもらいました。
上司の育休期間中の代理です。
お話をいただいた時は、今までの仕事ぶりと自分の能力が評価されたと感じ、嬉しくなりました。

この期間中、普通では出来ないような経験をたくさん積ませてもらうことが出来ました。
通常の演奏会や録音の運営に加え、総会での経営者としての報告、著名な音楽家、オーケストラ、音楽祭との交渉、助成金の申請書類の作成、税務、人事、著作権の管理、採用面接の主導等、時には胃を痛くしながらもなんとか無事やりきることが出来ました。

久しぶりに著者近影を載せます。
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近所に新しく出来たカフェで、ドレスデンに遊びにきたヴュルツブルク音大時代のソプラノの友人と朝食したときの写真です。
おいしかった!




先週金曜日に、ここ最近で一番嬉しかった仕事がありました。
あのBR、バイエルン放送でのラジオ放送のための現代歌曲の録音です。
ドイツでもクラシックといえばBRというイメージのある放送局。
ここで録音する機会をいただけたことを本当に光栄に感じています。

BR Studio Dez2021

録音したのは作曲家Claus Kühnlさんの歌曲集 Vom Grunde des Brunnens (「井戸の底から」)。クラウスさんはフランクフルト音大の教授を務められるなど、重要な現代ドイツの作曲家のおひとりです。ピアニストはもう十年近い付き合いになる南アフリカ人の素晴らしいピアニスト、エステア・クルーガー。作曲家に直接アドバイスをもらい、最高の共演者に恵まれて、幸せな仕事でした。
BR Studio Flügel Dez2021

エステアは普段南アフリカの大学で教えているので録音の直前にドイツに飛んだのですが、たまたまオミクロン株のために空路が閉鎖になる一日前、南アフリカがレッドゾーンに指定される前の便を予約していたために、奇跡的に入国とその後の録音が可能になりました。ただ、バイエルン放送の防疫規定が非常に厳しく、なんと録音当日の作曲家の同席はNG。そして出演者は全員ワクチン接種済みかつPCR検査済みでなければならないということで、PCR検査の結果が出るまで本当に録音が行われるのかドキドキしていました。作曲家が当日不在だったのは残念ですが、録音がキャンセルにならなかった奇跡にただただ感謝です。

歌曲集「井戸の底から」は小さな幸せや安らぎの中で絶望を予感する、陰鬱さの中でほのかな希望を求めてあえぐといった曲ばかりで、まさにコロナ禍の冬にぴったりの内容。
今回の録音に当たって感じたのが、自分の大きな成長でした。特にこの2年間で自分のドイツ語力が大きく進歩したことを実感しました。ドイツ語の内容を日本語を介在するのではなく完全にドイツ語として理解しながら歌うことが出来るようになったのがつい最近。そしてドイツ語話者に伝わる発音のためになにが必要なのかという細かな機微が以前よりもずっとよくわかるようになりました。また詩の解釈においても、見えていなかった多くのものが見えるようになったと感じています。
そんなわけで初めてこの歌曲集を歌った3年前とはまったく違った演奏になりました。録音の仕上がりと放送が楽しみです。

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録音が行われたニュルンベルクのスタジオ
久しぶりの投稿。

最近ドイツのコロナ感染状況が大変なことになっています。
そんな中ドレスデン室内合唱団は11月に3つのプロジェクトを予定していたので、右往左往する日々になりました。

ドイツでも特にドレスデンがあるザクセン州では11月に入ってから10万人あたり7日間の新規感染者数が300を超え、現在では700から900の間をさまよっている高止まりの状態です。この指数ですが、感染者数がかなり多かった8月の東京でも200-250ぐらいだったので(例えば8月19日で236)、そう考えるとかなり高い数値だということがわかるかと思います。当然、ただ感染者数が多いだけでなく病床使用率も合わせて上昇し、それに連動して11月頭にはザクセン州のコロナ対策が強化されることに。ドレスデン室内合唱団は11月9日に34人もの歌手とコントラバス、オルガンを加えた大編成の演奏会を予定していたので、急遽対応に追われることになりました。
特に大きな変更が、いわゆる2Gルールの導入でした。これはGeimpft(ワクチン接種済み) Genesen(コロナから回復済み)な人だけが演奏会の会場に入ることが出来るというもの。当然これは観客にも演奏者にも適応されます。演奏会数日前の段階で演奏会の開催が危ぶまれる事態に陥ったのですが、ザクセン州政府の方々に連絡して詳しい規則の例外などを確認し、なんとかことなきをえました。
こちらの演奏会は毎年11月9日に行われるもので、1938年のこの日にドイツ全土で起こったユダヤ人襲撃事件を反省するために企画されています。11月9日はベルリンの壁崩壊の日でもあり、ドイツ人にとっては大変複雑な意味を持つ日付けです。ベルリンの壁崩壊という喜ばしい出来事は本来なら毎年この日にお祝いされてもいいのですが、この日が祝いの日となりえないのは、そんな歴史的背景があるからなのだと思います。

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最近はドイツでも演奏者間のソーシャルディスタンスは段階的に縮小される流れでしたが、このプロジェクトでは注意深く守られています。そういったルールを含め、医師や理事会と相談して抗原検査やPCR検査の実施規則を定めるのにまた多くのエネルギーが費やされました。正直こんな複雑なことを非母国語話者がやっているのは我ながら頑張ってるなあと常々思います。

この演奏会の一週間後にはドレスデン音大の合唱指揮科の授業でドレスデン室内合唱団が学生の指揮を受けて歌うという小さなプロジェクトがあり、私も合唱団の一員として一緒に歌いました。教授のハンス・クリストフ・ラーデマンの指揮法のアドバイスは実に的確で、学生たちがわずかな時間の間に成長していく様を楽しみながら歌いました。指揮の勉強にもなってしまう大変有意義な時間でした。

そして今、本来ならこの週末は23日火曜日に予定していた演奏会のリハーサルのため仕事だったのですが…。この演奏会は残念ながら中止とせざるを得ませんでした。
ザクセン州のあまりに深刻な感染状況を受け、州政府が急遽部分的なロックダウンを決定したためです。22日月曜日からあらゆるイベントは禁止。そして文化関係の施設なども図書館を除いて全て閉鎖されることに。
この知らせを受けた一昨日の金曜夜には合唱団はちょうど火曜日のためのリハーサル中で、なんとも不思議な困惑と諦めに満ちた雰囲気になりました。
ただ、実際に危険がすぐそこにあるということを皆ひしひしと感じていますし、直前に演奏会が中止になるのももはや何回も経験していることなので、大きな混乱はありませんでした。

今はとにかくこのロックダウンが効果を発揮して、感染状況が落ち着くことを祈るばかりです。
ロックダウンは12月中旬までということになっているので、12月末に予定されているドレスデン室内合唱団の演奏会は開催されるつもりで準備していきます。どうなることやら。
少しだけとることが出来た休暇が終わり、忙しく演奏会の準備に追われています。

ドイツではまだ今のところ、コロナの状況は落ち着いています。7月ぐらいから規制がゆるくなり、少なくとももうしばらくはこのまま演奏会を続けられそうな気配です。


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休暇の前にあった重要なプロジェクトが、今年生誕450年没後400年を迎える2021年の最重要作曲家ミヒャエル・プレトリウスのCD録音でした。

ドイツの初期バロック音楽の礎を築いた大作曲家で、この記念の年をきっかけに、今後古楽の演奏会で取り上げられることが増えること間違いなしです。

制作の責任者として録音プロデューサーの隣に座り、ドイツのCD録音の一部始終を体験出来た幸せな日々でした。